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六彩会が、目指したもの。

六彩会が、目指したもの。

『戦後10年、昭和30年代の初めの頃は、
食事内容は変化しているものの、
食べられれば良いという時代でした。
その様な時に、栗原小田原保健所長が
「主婦に栄養の知識を持ってもらい、
《まず、家族の健康を》」と、
全国に先駆けて講習を行いました。
その受講生が、もっともっと、
勉強したいと「会」を作りました。』
(食生活改善推進団体 六彩会 50周年記念誌より)

 

「六彩会」という組織をご存知だろうか。
「六彩会」は、昭和36年に、
小田原市を中心に、
足柄下郡の箱根、湯河原、真鶴(=現在は休止中)の
一市三町の主婦たちで発足されたグループである。
グループ名は、
人間の食生活に必要不可欠な*1「六つの基礎食品」に由来する。
*1 六つの基礎食品=(魚・肉・卵・大豆の「1類」、
 牛乳・乳製品・骨ごと食べられる魚・海藻の「2類」、緑黄色野菜の「3類」、
 その他の野菜、果物の「4類」、米・パン・麺・芋の「5類」、油脂・種実の「6類」。)

 

バランスのとれた食生活をめざしながら、
アジ、イワシ、サバなど
地場産の大衆魚を利用した食文化の伝承や
普及を目的とした料理講習会を
中心に活動している。

 

「六彩会」の原点は、発足からさらにさかのぼる。
当時は終戦間もない頃で、
まだ物資も乏しかった。
そこで、神奈川県小田原保健所が中心となり
「もっとバランスのとれた食事を」と、
地域の食生活改善を目指して
指導者を養成するために、
婦人会など地域の婦人団体に受講を呼びかけ
「食生活改善指導者講習会」を開催した。
この講習会のシリーズで教わったものは
すぐに家庭で役立つもので、
それだけに教わる方も熱が入った。

 

この講習会が終了した後、卒業生から
「もっと勉強を続けたい」という声が上がり、
昭和36年に同講習会のOB有志17人で、
食生活の改善を目的とした組織をつくりスタートした。
それが、「六彩会」のはじまりなのだ。

 

当時は、まだ女性たちが外に出て
勉強するということが、
非常に珍しい時代であった。
会員たちは自分が教わった料理を、
今度は「指導者」となって
それぞれの地域にもどり町内や近所の主婦に教える。
これはまさに、
自治会を基本とした地域コミュニティーが
あるからこそだ。

 

地域を「人」単位でつなぐ
ネットワークをもつ
地域コミュニティーというのは、
こうした社会問題に取り組む時にこそ、
その迅速かつ、
一軒一軒までいきわたる
細かい伝達系統が威力を発揮する。

 

そして、時は現代。
発足から55年経った今も
六彩会の活動は続いている。
それどころか、世界的に
食生活と健康の関係に関心が高まるなか、
当時から「減塩」を推奨するなど、
時代に先がけていたその活動の意義は
さらに高まっているといえる。

 

先日、
小田原合同庁舎で行われた
一般参加者対象の料理講習会では、
最初に栄養士の方の
「魚と健康」についてのお話があり、
その後、錦通りの老舗鮮魚店
「魚國」の社長であり、
水産庁が任命した*2「お魚かたりべ」の
ひとりでもある古川孝昭さんを講師に招き、
魚屋ならではの実践で
身につけた魚のさばき方のコツを伝授しながらの
実演も行われた。
軽妙なトークと、
鮮やかな包丁さばきで、
いとも簡単に魚をおろしていく。
*2 お魚かたりべ=『国民の「魚離れ」を食い止めるため、
 魚食文化の普及・伝承に努めている方々を、
 水産庁長官が「お魚かたりべ」として任命』
 (水産庁ホームページより)

 

 

 

 

 

実演が終わると、
今度はそれぞれのテーブルに戻り
自分たちで魚をおろしてみる。
しかし、案の定見ていると
あれほど簡単に見えた包丁さばきが、
どうにもうまくいかない。
「うちの(テーブルの)包丁は切れないのよね」
などと包丁のせいにしながらも楽しそうだ。
「おいしく 楽しく 健康に 私たちの健康は 私たちの手で」
これが六彩会のスローガンだ。
まさに、「まず、家族の健康を」の精神なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、六彩会の歴史を調べるにあたり、会長の吉田伯子さん(写真左)、会計の岩田さんに大変お世話になりました。また、発足時のメンバーで会長も務められた瀬戸寿子さんの御次女 新田秀子さんには当時の貴重な資料などを見せていただきました。ありがとうございます。六彩会は年に一度申し込み期間があり、一年間で8回の講習を受けると入会でき、会員は市内の様々な催しの補助や、地域での指導を行っています。(※今回は一般参加者対象の会)
「魚を一匹丸ごと買えば、お刺身、焼き魚、フライと色々出来て、経済的。」と会員のみなさん。今日のメニューは「サバの大根鍋」「サバ、パプリカ、なすの南蛮グリル」、「かますのピカタ」、実演で使った「ワラサのお刺身」、この他に残ったサバのアラを茹でて作った「サバフレーク」(絶品!)や、出汁をとった昆布で作った佃煮など、素材を余すことなく使い、試食の時には予定にない小品がいつのまにか出来上がっているあたりは、さすが。

 

六彩会についてのお問い合わせ:
小田原市水産海浜課
0465-22-9227

 

:おとなりさんvol.11 2016.11.1発行号 掲載記事